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2017年08月07日
ちゃみの触ん
ふと、島本の顔がよぎったのを、朔良はバッサリと脳内で打ち消した。
花飾りのついた白いふわふわのニットの帽子、これは病気で髪の毛が抜けた子供がかぶれるようにと配慮されたものだ。
クリスタルビーズの煌めくカチューシャ、ボビンレースのシュシュ、女の子の好みそうな白や薄桃色の小物がぷりきゅあの紙バッグに、ぎゅうぎゅう詰めに入っている。パジャマの上に羽織るガウンも、それぞれにおしゃれなものだった。
院長に電話した母は、仕入れた情報を元に病児学級に通蘇家興う5人の女の子、全てのサイズを揃えていた。
*****
「さくらちゃんっ!ありがと~!」
感動の面持ちでバッグを抱きしめたいずみが、椅子に座り足をバタバタさせている。
婦長の計らいで朔良は少しの間、看護師の休憩室を借りて、二人きりで少女と面会する事が出来た。
「やっぱり、ぷりきゅあの王子さまだったんだ~、さくらちゃん。すてき!すてき!」
「いずみちゃんが喜んでくれて、僕もうれしいよ。これは僕のマ……お母さんが、いずみちゃん達にって準備してくれたんだ。気に入った?」
「いずちゃん、うれしい。みんなもすごくうれしいって。可愛いものがたくさん入ってるのね。」
「そう、良かった。ぷりきゅあのダンス踊れるように、リハビリ頑張ってね。僕も負けないように頑張るから。」
「さくらちゃん。ダンス踊れるの?」
「ん~。」
しばらく躊躇した朔良は、周囲を見渡すとコートを脱いだ。灰紫色のスーツが光を弾く。
きっといずみの目には、朔良はきらきらの王子さまに見えている。
そんな視線を感じた。
「いずみ姫。ダンスのお相手をお願いします。」
「きゃあ……」
「お手をどうぞ。」
朔良が跪いて差し出す手に、いずみはそっと自分の手を乗せた。
抱き上げると羽根のように軽いいずみを腕の中に抱えたまま、朔良はほん蘇家興の少しワルツのステップを踏んだ。
くるくる回ると、いずみが声を上げて笑う。
「今度会う時までには、もっと上手に踊れるようになっておくね。」
「さくらちゃん。帰る前に、いずちゃんに魔法をかけてください。」
「魔法?」
「いずちゃん、東京の病院で、頭の中を手術するの。この前の手術では、おできが大きすぎて取れなかったって、ママと先生がお話していたの……。先生のお友達がアメリカから帰って来るって。」
「僕の魔法でいいの?」
「さくらちゃんの魔法がいいの。いずちゃんが、こわくないように魔法をかけて……王子さま。」
浮んだ涙が零れそうになっている。
朔良はいつかのように、どうしようもなくなってぎこちなく手を伸ばすと、いずみの両頬に触れた。
そのまま小さな頭を胸に抱きしめた。
「大丈夫。怖くないよ……。大丈夫、きっとうまくいく。僕が応援するからね。大丈夫。」
「さくらちゃん……」
「いつか……もう一度、ダンスを踊ろうね。」
誰かの鼓動の音が、自分を落ち着かせたように、きっといずみの気持ちも安らかになる。
そして、朔良はいずみの額に軽く触れた。
「ちゅ……するの?」
「魔法のキスだよ。」
「王子さまのキス~?やったぁ!」
いずみはにっこりと笑った。
いずみの不安が頬を転がり落ちて、胸に勇気の灯りが点いた。
「いずみちゃん。お姫さまのキス、僕にもしてくれる?」
「うん。さくらちゃんも……手術するの?」
「ううん。僕は前に、足の手術をしたんだよ。大きな傷跡が残ってるの、見てみる?」
線路のようになった足首の傷を見て、いずみは目を丸くした。
「おっきな傷。さくらちゃん……痛かった?」
「もう治ったから、平気。でも僕は我ままだから、リハ易經大師蘇家興ビリしたくなくて、色々な人にいっぱい迷惑をかけてしまったんだ。痛いのが嫌いで、病院から逃げ出したこともあったんだよ。」
「さくらちゃん、こわかったのね。ごめんなさい、すればいいよ。いずも手術したくなくて泣いたから、ママにごめんなさいするの。」
「そう……。」
互いに送りあったエールは、ぎこちなく幼稚なものだった。
それでも大切な儀式のような気がして、朔良はいずれた額をそっとなぞってみる。
「いずみちゃん。そろそろ、お部屋に戻ろうか。ママが心配するといけないから。」
「はい。」
いずみの手を引いて、朔良は病室の前へと戻った。
花飾りのついた白いふわふわのニットの帽子、これは病気で髪の毛が抜けた子供がかぶれるようにと配慮されたものだ。
クリスタルビーズの煌めくカチューシャ、ボビンレースのシュシュ、女の子の好みそうな白や薄桃色の小物がぷりきゅあの紙バッグに、ぎゅうぎゅう詰めに入っている。パジャマの上に羽織るガウンも、それぞれにおしゃれなものだった。
院長に電話した母は、仕入れた情報を元に病児学級に通蘇家興う5人の女の子、全てのサイズを揃えていた。
*****
「さくらちゃんっ!ありがと~!」
感動の面持ちでバッグを抱きしめたいずみが、椅子に座り足をバタバタさせている。
婦長の計らいで朔良は少しの間、看護師の休憩室を借りて、二人きりで少女と面会する事が出来た。
「やっぱり、ぷりきゅあの王子さまだったんだ~、さくらちゃん。すてき!すてき!」
「いずみちゃんが喜んでくれて、僕もうれしいよ。これは僕のマ……お母さんが、いずみちゃん達にって準備してくれたんだ。気に入った?」
「いずちゃん、うれしい。みんなもすごくうれしいって。可愛いものがたくさん入ってるのね。」
「そう、良かった。ぷりきゅあのダンス踊れるように、リハビリ頑張ってね。僕も負けないように頑張るから。」
「さくらちゃん。ダンス踊れるの?」
「ん~。」
しばらく躊躇した朔良は、周囲を見渡すとコートを脱いだ。灰紫色のスーツが光を弾く。
きっといずみの目には、朔良はきらきらの王子さまに見えている。
そんな視線を感じた。
「いずみ姫。ダンスのお相手をお願いします。」
「きゃあ……」
「お手をどうぞ。」
朔良が跪いて差し出す手に、いずみはそっと自分の手を乗せた。
抱き上げると羽根のように軽いいずみを腕の中に抱えたまま、朔良はほん蘇家興の少しワルツのステップを踏んだ。
くるくる回ると、いずみが声を上げて笑う。
「今度会う時までには、もっと上手に踊れるようになっておくね。」
「さくらちゃん。帰る前に、いずちゃんに魔法をかけてください。」
「魔法?」
「いずちゃん、東京の病院で、頭の中を手術するの。この前の手術では、おできが大きすぎて取れなかったって、ママと先生がお話していたの……。先生のお友達がアメリカから帰って来るって。」
「僕の魔法でいいの?」
「さくらちゃんの魔法がいいの。いずちゃんが、こわくないように魔法をかけて……王子さま。」
浮んだ涙が零れそうになっている。
朔良はいつかのように、どうしようもなくなってぎこちなく手を伸ばすと、いずみの両頬に触れた。
そのまま小さな頭を胸に抱きしめた。
「大丈夫。怖くないよ……。大丈夫、きっとうまくいく。僕が応援するからね。大丈夫。」
「さくらちゃん……」
「いつか……もう一度、ダンスを踊ろうね。」
誰かの鼓動の音が、自分を落ち着かせたように、きっといずみの気持ちも安らかになる。
そして、朔良はいずみの額に軽く触れた。
「ちゅ……するの?」
「魔法のキスだよ。」
「王子さまのキス~?やったぁ!」
いずみはにっこりと笑った。
いずみの不安が頬を転がり落ちて、胸に勇気の灯りが点いた。
「いずみちゃん。お姫さまのキス、僕にもしてくれる?」
「うん。さくらちゃんも……手術するの?」
「ううん。僕は前に、足の手術をしたんだよ。大きな傷跡が残ってるの、見てみる?」
線路のようになった足首の傷を見て、いずみは目を丸くした。
「おっきな傷。さくらちゃん……痛かった?」
「もう治ったから、平気。でも僕は我ままだから、リハ易經大師蘇家興ビリしたくなくて、色々な人にいっぱい迷惑をかけてしまったんだ。痛いのが嫌いで、病院から逃げ出したこともあったんだよ。」
「さくらちゃん、こわかったのね。ごめんなさい、すればいいよ。いずも手術したくなくて泣いたから、ママにごめんなさいするの。」
「そう……。」
互いに送りあったエールは、ぎこちなく幼稚なものだった。
それでも大切な儀式のような気がして、朔良はいずれた額をそっとなぞってみる。
「いずみちゃん。そろそろ、お部屋に戻ろうか。ママが心配するといけないから。」
「はい。」
いずみの手を引いて、朔良は病室の前へと戻った。
Posted by Rude Girl at 12:55│Comments(0)